職人が一人前と呼ばれるようになる期間はどのくらいだと思いますか。
よく寿司職人やてんぷら職人、うなぎ職人などは「握り何年」とか「串打ち何年」などと長期の修業期間が必要であるような話を聞きますが、本当にそうなのでしょうか。
弊社はほぼ職人で構成されております。横文字でいうとスタイリストです。飲食業ではありませんが技術職という点では同じです。
今現在私は京都店を任せてもらっておりますが、そこで仕事をこなせているのは新大阪店での修業期間があったればこそです。
かつら会社の勤務経験がある人とは違い、私は理容師ではありますが、かつらの技術は未経験からのスタートでしたので、お客様の自毛の散髪、かつらのクリーニング、セットなどの下働きから始め、諸先輩の仕事を見て少しずつ覚えていったものです。
理容師なら切って梳けばできるだろうと思われるかもしれません。切るのはいいのですがかつらの毛量調整は生身の人間に施すものとは次元が違います。
捨ててもよい練習用かつらを、梳きばさみを用いて量の調整をやってみるのですが、減らしすぎたら怖いという感情から思うように減らせなかったり、勇気をもって思い切って梳いてみたら、今度は減らしすぎて穴をあけたりと、たくさんの失敗もしてきました。
ときには弊社を応援してくださる優しいお客様のご協力の元、装着した状態でのカットをさせてもらったりもしました。しかし経験の浅い人間がカットすると「切り足りない」「梳きたりない」「梳き過ぎ」などを発生させてしまうのですが、諸先輩のリカバーがあったので失敗しても、「何が足りなかったのか」「何が間違っていたのか」をその場で勉強することができました。
修業期間というのは諸先輩のリカバーのある状態で、いろんな失敗をしても対処法を学んだり、失敗して肝を冷やした経験から次に同じ失敗をしなくなるための期間であろうと思います。
5~6年ほど、そんな状況の中で仕事をしておりました。
現在は一通りの仕事はこなしておりますが、今まで出来ていたと思っていた仕事でもふと「これでいいのだろうか、もっとこうしたほうがよいのでは?」などと脳裏によぎり、修業は一生終わらないと観念しております。
寿司職人の適正な修業期間はわかりませんし、その期間が何年必要かは人それぞれだと思います。長けりゃいいというものでもないでしょうが、人間は失敗することで成長することができますので、それ相応の修業期間は必要であろうと考えます。
京都店 川北